サンプルは簡単に作れるのに観察とか計測が上手く行かなくて困ってます、サイトーです。
今回は、サイトーがしている研究でも使っている透過型電子顕微鏡(TEM)の使い方を備忘録がてら書いていこうと思います。
ちなみにサイトーがぶっ壊した装置もこの透過型電子顕微鏡(TEM)でございます。
「テム(TEM)ってやつを使うらしいんだけど準備するものとかあるの?」とか「テムってなんすか」って方の疑問点や不安な部分を解決できたらと思います。
テム(TEM)に限らず、初めての測定装置を扱うのって結構怖いですよね。
あともう透過型電子顕微鏡って打ち込むのが面倒くさいんでTEMに統一します。
TEMって何?
TEMとは”Transmission Electron Microscope”の略で、簡単に言うと「サンプルに電子ビーム当てて透過した電子をソースにした電子顕微鏡」です。
ただTEMは顕微鏡としての使い方以外でも、回折光のパターン形状から結晶構造を決定することも出来るらしいので、本当に簡単に言うとこうなるよって事を知っておいてください。そして本職の方はこれ以上突っ込まないでください。ボロが出てしまいます。
TEMを作ってる会社は日本に三社しか存在しませんので、一つのTEMが使えるようになれば割と汎用性の高いスキルを身につけることが出来るといえます。
ちなみにTEMを作っている会社は
の三社です。
社名をリンクにしておきましたので、もし必要ならリンクから飛んで調べてみてください。
TEM撮影に向いている試料
TEM撮影に向いている試料は「薄く加工しやすい材料」が非常に向いています。
また、微粒子などの「十分小さい材料」も向いています。
ここでいう「薄い」とか「小さい」は大抵5μm以下を指すことが多いですが、少しでも5μmより小さければ必ず撮影出来るかと言われると絶対撮れるとは言えません。
ですので、あくまでも目安程度に考えて一度撮影してみることをオススメします。
ここで注意しておきたいのは、TEMで撮影する画像が文字通りサンプルを透過した電子をソースとしている点です。
例えば、薄膜材料を撮影した場合を考えます。
この時、薄膜を成長させた基板をTEMで撮影しようとしても絶対に無理です。
(何故なら基板も含めると分厚すぎるから)
他にも、透明な材料を撮影する場合を考えます。
これは厚さにもよりますが、分厚ければ当然撮影はできません。
色の有無と撮影の可否は電子顕微鏡では無関係です。
ですので、自分が撮影しようとしているサンプルがどれほどの厚さなのか、もし分厚いなら薄く加工することは可能か、基板上に成長させているのであれば剥離させることは可能か、というようなポイントを抑えていく必要があります。
TEMサンプルの作成
それでは、実際にTEMを撮影するためのサンプル作成をやってみましょう。
TEM撮影をするサンプルは大きく分けて微粒子とバルク(=塊)が挙げられますので、それぞれについて書いていきたいと思います。
ちなみに私は微粒子しか観察したことが無いので、バルクは解説程度に留めさせていただきます。
微粒子を観察したい場合
微粒子をTEMで撮影したい場合のサンプルは、グリッドメッシュやシートメッシュと呼ばれる細かい網に付けることでサンプルとします。
ただ「グリッド」とだけ書いてあったり言われたりした場合は網ver.と網無しver.のどっちかが分からないので、絶対に確認するようにしましょう!
微粒子を観察する場合は「メッシュ」という文字列が存在しているはずなので、商品名から見分ける目安になります。
具体的な手順としては
- 任意の溶媒に対象の微粒子を拡散させる
- ベンコットやキッチンペーパーなどの上にグリッドを置く
- 対象の微粒子を拡散させた溶液をグリッド上に滴下する
- 溶液を滴下したグリッドを乾燥させる
の4ステップでサンプル作製が完了します!
この方法は分散法と呼ばれる方法で、これ以外の方法で微粒子のTEMサンプルを作る方法をサイトーは知りません…
バルクを観察したい場合
バルクをTEMで撮影したい場合のサンプルは、切り出した材料をシングルホールグリッドと呼ばれる、丸穴が開いた丸板のようなものに貼り付けることでサンプルとします。
こちらは逆に網が無い方のグリッドを使いますので、確認するようにしてください!
具体的な手順としては
- FIBなどで対象物を薄く切り出す
- エポキシ樹脂などでシングルホールグリッドに糊付けを行う
- 糊付けされたシングルホールグリッドに薄く切り出された対象物を貼り付ける
の3ステップでサンプル作製が完了します!
バルクを観察する場合のサンプル作製法は、手順1.の対象物を切り出す方法によって名前が異なります。
切り出す方法としては
- FIBを使う(FIB法)
- イオンビームを使う(イオンミリング法)
- エッチング反応を利用する(電解研磨法)
- ナイフで切り出す(ミクロトーム法)
- 粉砕した破片を利用する(粉砕法)
が挙げられます。(参考)
TEM撮影の方法
ここまででTEMを撮影するためのサンプルができたので、実際にサンプルの撮影を行っていきましょう!
TEM撮影の流れはこんな感じになってます。
- 電子銃を昇圧する(割と時間がかかる)
- サンプルホルダーにサンプルをセットする
- サンプルホルダーを本体に突っ込む
- ビームを出してから電圧軸、電流軸、非点収差の補正を行う
- 絞りの挿入と調整を行う
- 画像の撮影を行う
流れを簡単に説明すると本当に簡単に撮影できそうに感じるかもしれませんが、割と時間が掛かりますし、調整は非常にめんどくさいです。
具体的には、電子銃の昇圧に20分から30分程度は掛かりますし、撮影条件の補正はなんだったら補正しきれずに諦めることもあるレベルです。お前が下手なだけとか言わない!
ですので、何回も繰り返し練習して動きを省力化することが重要となります。
ただ、昇圧はプログラムに則って自動で動くだけだったりするので、それ以外の部分で技術を活かしていきましょう
まとめ
今回はTEMのサンプル作製から撮影までを解説していきましたが、サイトーは分かりやすい書き方で書けていましたか?
ただ、不明な点があってもサイトーに聞くよりも担当の人やメーカーの技術者の方に問い合わせした方が確実かつ素早く返答が返ってくるので、分からないことがあったらそちらに問い合わせをお願いします。
TEM撮影は練習あるのみだというのはサイトーにも刺さる言葉なので、頑張って練習して良いコントラストの画像が撮影できるようになりたいものです…
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