論文って凄そうな響きですよね。
「○○大学の研究によってこういう論文が投稿されていて~・・・」
このような論文紹介はYouTubeやテレビなどでよく行われています。
しかし、一言で論文と言っても信用性や質がピンキリであることを知っていましたか?
今回はそんな論文に関する基礎知識と論文が情報ソースとして信用できるとは限らない理由についてシェアしていきます。
結論から言うと、論文が信用できるとは限らない理由は二つあります。
- 査読(Peer Review)を行う研究者が忙しすぎてまともに査読出来ていない可能性があるから
- 論文を載せる雑誌であるジャーナルの中にもお金を払えば何でも受理するようなジャーナル(ハゲタカジャーナル)が存在しているから
論文って何?
そもそも「論文」とは何でしょうか?
Wikipediaではこのように解説されています。
論文(ろんぶん、英: paper)とは、学問の研究成果などのあるテーマについて論理的な手法で書き記した文章。
Wikipediaより
ざっくり言えば「こういう研究したらこういう結果が得られたよ!」って報告のガチバージョンですね。
このようなガチ報告をまとめているのがジャーナルと呼ばれる雑誌で、論文誌とか学術雑誌とも呼ばれています。
研究者の卵である大学院生や大学の先生は、このジャーナルに自分が書いた論文を掲載してもらうことを目標に日々研究しています。
ちなみに、論文を投稿して受理されるまでには早くても数か月は掛かるので、普通は学生が取ったデータを基に先生が読みやすく論文を書くというように協力するというパターンが多いです。
論文がジャーナルに掲載されるまで
投稿した論文は他の研究者に一度渡され、おかしい点が無いか、データは揃っているかなどをチェックされます。
このチェックのことを査読(さどく:Peer Review)といいます。
査読を通った論文だけがジャーナルに受理(Accept)され、業績としてカウントされるのです。
なお、査読の結果によっては修正や追加データを求められたりします(リバイス)し、場合によってはそのまま掲載却下(リジェクト)となります。
正直、微修正も無しの一発で受理されるのは珍しいので、一発リジェクトではなくリバイスの返信が来た方はむしろ希望を持って論文執筆を頑張ってください。
APA (American Psychological Association) に投稿された論文のジャーナル別掲載拒否率があったので、気になる方は見てみてください。
2017年の例を見ると、90%以上がリジェクトされているジャーナルが存在していることから論文が受理されるのは難しいことが分かります。
論文と学会発表の違い
論文以外にもよく持ち上げられるのが学会ですが、論文と学会発表の違いはどんなところにあるのでしょうか?
主な違いは査読の有無です。
論文は先ほど説明したように査読という厳しいシステムを通り抜けたものだけがジャーナルに掲載されますが、学会発表は登壇の申し込みをすれば誰でも発表することができます。
このようなシステムの違いが生まれるのは、論文と学会発表の立ち位置が違うためです。
論文投稿は研究における一つのゴール地点であり、学会発表は研究の途中経過にあたります。
そのため、「今は未完成だけどこんなことやってるよ!」という発表の場である学会発表を取り上げて「すごい!」というのは変な話になるわけです。
ただし、研究のゴール地点である論文も査読を通っているからといって全部を信用できるとは限りません。
その理由については次で解説します。
論文が信用できるとは限らない理由
論文は査読を通っているんだからジャーナルに載っている論文は信用できるに決まっているだろう!
このように考える方は多いと思います。
しかし、論文の環境のせいでどうしても低品質な論文は存在してしまいます。
そんな信用できない低品質な論文が世に出てしまう理由としては二つあります。
- 査読(Peer Review)を行う研究者が忙しすぎてまともに査読出来ていない可能性があるから
- 論文を載せる雑誌であるジャーナルの中にもお金を払えば何でも受理するようなジャーナル(ハゲタカジャーナル)が存在しているから
査読(Peer Review)を行う研究者が忙しすぎてまともに査読出来ていない可能性がある
そもそも査読は誰がやっているのでしょうか?
答えは研究分野が同じor近い研究者です。
ちなみに査読に対する謝礼金などは無いので、査読者はタダ働きで査読をすることになります。
大抵は大学の先生が査読者として選ばれるのですが、大学の先生は事務作業や学生指導で多忙を極めています。
そのため、査読をお願いされた先生が査読のためのまとまった時間を取れずに雑な査読をする場合があります。
査読は強制ではないので別に忙しければ断れば良いのですが、大学の先生は基本的に頼まれると断れないタイプの人間が大多数なので、全部引き受けてしまってキャパのギリギリを攻めてしまうパターンが多いです。
そして、査読者は複数人居るのが通常ですが「全員キャパシティの限界を攻めている人だった」かつ「論文執筆者がポンコツだった」という条件が重なるとトンデモ論文が世に出ることとなってしまうのです。
半ば事故のようなものであり決して確率としては高くありませんが、このようにトンデモ論文が世に出る可能性は0に出来ないのです。
論文を載せる雑誌であるジャーナルの中にもお金を払えば何でも受理するようなジャーナル(ハゲタカジャーナル)が存在しているから
ジャーナルというものは論文を執筆した著者からの論文掲載料(APC)と発行したジャーナルの購読料によって運営されています。
しかし、ある程度レベルの高い論文が定期的に集まらないと購読料が集まらず、運営が立ち行かなくなってしまいます。
そこで金儲けをしようと割り込んできたのがハゲタカジャーナルです。
ハゲタカジャーナルは論理が破綻している論文でも再現性が取れない論文でも掲載させてしまいます。
当然ですが、そんな論文ばかりでは誰も読まないのでジャーナルの購読料はほとんど入ってきません。
そこで、ジャーナルの購読料が減った代わりに著者から莫大な論文掲載料を取るのです。
普通のジャーナルではいくら高くても論文掲載料が数十万円程度であるのに対し、ハゲタカジャーナルは100万円を超える論文掲載料を要求してきます。
それでも「あくまで支払いは研究費(自腹ではない)」ということと、「投稿者の実績(論文執筆数)が増える」ことから、ハゲタカジャーナルへの投稿は後を絶ちません。
そして、低品質な論文が世に出ることとなるのです。
情報を鵜呑みにするんじゃなくて自分でも考えるべきってまとめ
今回は論文だからって必ずしも信用できるとは限らない理由について書いてきました。
全く研究に関わらなかった人にとってはよく分からなかったかもしれませんが、ここまで読んでいただけた方はとりあえず凄そうだから信じる!というフェーズからは抜け出せるのではないでしょうか。
本当に重要なのは「誰が言ったか」ではなく「自分はどう考えるか」という点なので、集めた情報から自分がどのように考えて行動するかが大切です。
これからの時代、情報は溢れるほどに押し寄せてきますが、自分で考える力を養うことで悪い奴に騙されないようにしましょう。
それでは。
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